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2009年4月27日 (月)

AVケーブルが持つ固有の音は誘電体歪??

09/4/27

 最近AVケーブルの音質問題で下記のような記述を見つけました。別に悪口を言うつもりはありませんが、その根拠が示されてないのと、ケーブルの伝送技術論と懸け離れた主張であるようで、私の理解の範疇を超えています。別に理論立てが正解でなくとも、結果としてスピーカーから出てくる音が心地よければ良い世界の話ではありますが・・・

① ケーブルが持つ固有の音は誘電体歪である

② 絶縁体が遅延時間を有する

③ 誘電体が振動する

①の誘電体歪とは何を指しているのか分かりませんが、ケーブル伝送理論でいう誘電体は、導体間に挟まれる絶縁体であります。電気的な等価回路(4端子回路)では直列に導体抵抗:Rと導体の持つインダクタンス;Lが入りZs=R+jωL、並列に漏洩コンダクタンス;Gと静電容量;Cが入りZf=G+jωCとなります。誘電体が関与しているのは、GとCであります。GはさらにG=ωCtanδで、tanδは誘電正接と言われ、誘電体固有の定数でありますが、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)のように信号伝送のケーブルの使用される材料ではtanδ=0.0002程度であるので、ZfはほとんどCの関数になります。そこでCですが、これは使用される誘電体の比誘電率とケーブルの構造に由来します。上記したPEやPPの比誘電率(εs)は低周波域から高周波域まで一定で、εs=2.3程度です。通称”塩ビ”と称されるポリ塩化ビニル混合物(PVC)はケーブルに使用する場合には、柔軟性の要求があるので、可塑剤といわれる液体等と混ぜ合わせて使用されます。PVCは内部に液体があるので、イオン化された電荷や電子が動きやすいために、PVCのεsは商用周波数の50Hz程度では7~8、周波数が上がると、大きなイオン化されたものは周波数に追随出来なくなるため、100kHzでは4程度まで低下します。即ち、Cは周波数で大きく変わるのでこれを称して歪と言われる事があります。PVCは現在も電源コード等には多く使用されていますが、信号伝送用AVケーブルに使用されることは上記理由で無いでしょう。これがケーブル技術の概説でありますが、何を称して”固有の音は誘電体歪”なのでしょうか?

②の絶縁体が遅延時間を有するのは事実です。この事は下記URLの「伝播速度」という項に詳細な説明がしてあるので、参考にして下さい。実際にケーブルを伝わる信号は20Hzでは真空中を伝わる電磁波(C=3x10^8m/sec 1秒間に地球を7周半回る)の10%程度で、100kHzになると50%程度にアップします。しかし考えてほしい。10%でも地球を0.7周です。我々が使用するオーディオケーブルはせいぜい数mであり、この違いが分かるだろうか? 又、音声帯域の周波数では遅延時間を決めるのは絶縁体(誘電体)だけでは無く、R、L、Gも関与している。専門的には位相定数(β)から計算されます。因って、遅延時間が音質を決定しているとはとても考えられない。LANの様な高速のデーターをパラレル伝送する世界では、対間の伝播時間差が議論される事がありますが。

http://homepage2.nifty.com/NEGY/

③の誘電体が振動するとはどんなメカニズムなのでしょうか? 誘電体が静電気で帯電でもしていないと、力は働かないのではないでしょうか? 導体には電流が流れますから、磁界があればフレミングの法則で力が働くというのは理解できますが、ただ計算していないので分かりませんが、オーディオ信号は電線が振動するほどの力を発揮できるのでしょうか? 音声帯域の電流で振動するなら耳に聞こえる音がするはずです。これは冗談ですが、スピーカーが要らなくなるか?  

実際に製品化した、ケーブル構造が、この①②③の主張をしているURLに記載されていますが、この構造は静電容量が大きくなる構造ですので、①の誘電体歪みを少なくする方向と違っているように見えます。音質が良いという評価を受けているとしたら、音を良くしている理由はこの謳い文句とは違った要素が寄与しているのではないかと思う次第です。

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