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2011年6月10日 (金)

UL規格電線・ケーブルに付いて

11/6/9

 11/5/22付けの当ブログに電線・ケーブルの法規制に付いて概要を記載致しました所、ある方から、”米国のUL規格とは?”とのご質問を頂きましたので、AV機器回りを中心に少し詳しく説明をします。

 私は約40年前に、非鉄金属メーカーに入社し、間もなく担当しましたのが、”BEAMEX"と称する商品名の電子機器用電子線架橋電線でした.架橋とは、熱可塑性のポリエチレンや塩化ビニルの分子鎖相互に横断する結合を作り、鎖を網の目状の結合にする事で、熱硬化型樹脂にする事です。詳しい説明は省きますが、機器用電線の様な絶縁厚さが薄く、せいぜい1.5mm程度までの電線には、高電圧で電子を加速してポリエチレン等の絶縁物に照射すると、上記した架橋反応を起こします。この結果、従来80℃程度までしか使用出来なかった電線が、絶縁材の組成に因っては最大150℃まで使える耐熱電線に変容します.又、最大の特徴は、短時間の耐熱性が優れている事で、半田コテが触れても絶縁材料が解けない特徴が付与されます.ハンダ付けの技術が下手でも、問題ない!! AVCTの4C-XEW、ST-1Q,ST-1Pの絶縁体にはこの架橋ポリエチレンを使用していますので、半田付けに精通していない方でも、半田付けの失敗は無くなります。
 ”BEAMEX"の販売に出てみると、多くの電子機器メーカーの技術担当者から、「UL規格を取得してから出直して来なさい!!」とのご指摘を頂く事に成りました。当時の日本の電子機器メーカーは、現在の中国と同様で、世界の電子機器の生産国と成ろうと、立ち上がる時代で、オーディオ機器も世界市場を席巻し始めていました。そこで、世界各国の安全規格に適合した製品の生産が必要に成った訳です。
 UL規格とそのフォローアップ体制に関しては、添付の古河電工の電線要覧に詳しい説明が有りますので、それを参照して下さい。

 UL規格は火災保険を中心とした規格ですので、電子機器内外に配線する全ての電線・ケーブルに付いて規格が適用に成ります。例えば30V用の電線が発火元になることは考え難いのですが、導火線には成るので、全ての電線を対照にした規格となって居ます。オーディオ機器に関係する主な規格は;
 ① Standard 758 (以前はSubject 758);Appliance Wiring Material; 機器用電線
 機器用電線には多くの電線・ケーブルの仕様があり”Style @####”の様に、”Style"の後に付けた4桁又は5桁のNo.で製品仕様を区別しています。この仕様書は”Style page"と称され、電線・ケーブルの構造、使用材料と立会官が製造工場で検査する項目、定期的にシカゴ近郊のNorthbrookと言う所にある試験所で行われる抜き取り試験項目の記載もあります。
 Style No.の1桁目:@には意味があり;
  @=1;熱可塑性絶縁材料を使用した単心の絶縁電線、シールド線、同軸線
  @=2;熱可塑性絶縁材料を使用した2心以上のケーブル等
  @=3;熱硬化性絶縁材料を使用した単心の絶縁電線、シールド線、同軸線
  @=4;熱硬化性絶縁材料を使用した2心以上のケーブル等
  @=5;その他

という事で、1桁目で大雑把な括りを理解できます。珠に例外はありますが・・、電線表面に” ULのロゴマーク  AWM 1007 20AWG  ”といった表示がしてあったら、これはUL規格の機器用電線です。

 ② Standard 62 ; Flexible Cord & Fixture Wire: 電源コード等

この規格は機器に給電する電源コードの規格です。

 ③ Standard 444; Communication Cable ; LANケーブル等

この規格はCat.5等のLANケーブルや電話等の通信ケーブルの規格です。この規格を適用したLANケーブルには” ・・ CM ・・”という表示が入っています。

 日本の住宅内の配電盤~コンセントまでの配線は、内線規定が適用になりますが、この米国版はNEC規格と称されます。

 日本のPSE法とUL規格の大きな違いは;

1) UL規格では機器内配線から、屋内配線まで、全ての電線・ケーブルはUL規格の取得品である必要があります。AV機器に使用される電線・ケーブルは全て垂直の燃焼試験であるVW-1に合格している必要があります。

2) PSE法の認定は7年に1回再申請して型式認定を再取得しなければなりませんが、UL規格ではこの様な再取得制度は無い代わりに、添付資料の如く、基本的には全生産品がUL立会官の立会い検査の対象になります。この方式は、電線・ケーブルを購入する立場からすると、ULが検査をしてくれるので、品質管理的には、安心して使用出来るメリットがあります。

 高難燃性の要求と音質問題; 

 AV機器周りに使用される電線・ケーブル類は添付資料にある”VW-1”と称する垂直燃焼試験に合格する必要があります。(PSE法にもVW-1に酷似した試験があり、ブラウン管TVのフライバックトランス周りや、電子遊具器などで使用する電線に適用されています。)

 電線が高い難燃性を得る為には、絶縁やシース材料に高い難燃性を付与する必要があり、多くの難燃剤が絶縁物に配合されます。この結果、絶縁材料の比誘電率や誘電正接といった、信号伝送で重要に成る特性が低下します。例えば、1MHzでのポリエチレンの比誘電率は2.3ですが、難燃ポリエチレンでは約3.5、塩化ビニルでは4.0程度と大幅にアップします。音声帯域では更に大きな値となり、低音域になるに従いケーブルの静電容量が増大しますので、低音域の帯域が狭まる傾向となります。

 国内ではUL規格は適用になりませんので、自作派の方は、CVケーブル等のポリエチレンをベースにしたケーブルを使用することで音質の改善を図る事が出来るでしょう。又、一つ楽しい遊びが出来る存在のケーブルはCat.5等のLANケーブルです。LANケーブルの絶縁体はポリエチレンで、ケーブルとしてJIS X 5150のLAN規格を満足しますので、ある意味、きちんと造られている訳です。このケーブルをLAN以外の用途に使用してみるのも面白いと思います。LANケーブルは基本的には4対ですので、AVCTのSP-6Pの如く、各対の線心をパラレルに配線してスピーカーケーブルとしてみるのも面白いと思います。この種のトライにはシールド無しのケーブルの方が良い結果を得られることでしょう。

「ULCSAkaisetsu.pdf」をダウンロード

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