光回線 勧誘に苦情増加 の新聞記事に付いて
11/2/15
本日、2月15日付け朝日新聞の夕刊トップに「光回線 勧誘に苦情増加」の記事が出ています。我が家にもしょっちゅうこの手の勧誘がありますが、全く取り合っていません。と言うのは、ADSLと言う方式は優れものだからです。光回線がADSLより完全に安くなったら考えれば良いのです。
実は前にもどこかに書いたかも知れませんが、ADSLの実用化はNTTで、1995年頃検討されていました。当時私は勤めていた会社で、メタルケーブル(光ケーブルに対して銅線を使用したケーブルをメタルケーブルと言う)の研究開発をする部署に居ました。主な研究テーマは皆さんが現在使用している、LAN用のCat.5、Cat.6ケーブルや、オーディオ用ケーブル、高速、細径同軸ケーブル等でした。所が、ここにADSLが実用化可能か、ケーブル特性を評価して欲しい旨の依頼が舞い込んで来ました。当時、ケーブルメーカーの通信ケーブル開発の主眼は光ケーブルであり、メタルケーブルの技術が判る部署が私の部署しかなかった事に起因していました。
実際の作業は、電話局から各家庭に配線されているCCPケーブルというケーブルの漏話特性の解析です。従来、音声を伝えていたケーブルに、パルスデーターを乗せるのです。パルスデーターは基本周波数に加えて、パルスの立ち上がり、立下りの高周波成分が含まれるので、漏話が起こり易くなるのです。CCPケーブルの多くの漏話データーが持ち込まれ、実際に漏話が起こり、データーが改ざんされる確率を求めました。結果は、明確に覚えていませんが、当時実用化しようとしていた16Mbps伝送にはおつりが来るほど特性は良好で、100Mbps程度までは問題なく使用できる状況だったと思います。この結果はNTTに報告され、程なく実用化が計られました。この際、漏話はケーブル長が長くなると特性が悪くなりますから、確か、電話局から1.6kmまでの範囲といった制限がありました。
現在我が家は、50MbpsのADSLに加入していますが、電話局からは約300m程度の距離で、従来ADSLを使用していた方が、光に移っていくと、同じCCPケーブルを使用する人数はそれだけ少なくなり、漏話が起こる確率もその分少なくなるので、更に確実な通信が出来る訳です。より安心してADSLを”フルに使う”ことが出来ます。と言う事で、我が家は当分ADSLを使い続ける予定です。実際に家族5人で使用していますが、全く遅いと感じた事はありません。
”フルに使う”とはどういうことか? 光回線を勧誘している営業マンも良く知らないことがあります。インターネット回線は”Best Effort”という方式が採用されています。売り言葉では”100Mbpsの伝送が出来ます”と言われますが、この言葉の前には”Best Effort”でと言う巻頭詞が付くのです。簡単に言えば”最大で”です。100Mbpsの回線を同時に2人で使えば50Mbpsと成る、10人が同時に使えば10Mbpsに成るということです。この”同時に”がミソですが、1本の光ケーブルに何人がぶら下がっているかが問題です。インターネットメールのような使用状況では、100Mbpsの伝送容量があれば、1回の使用時間は非常に短くなり、10人が使っても問題がありませんが、将来、皆が動画や音楽等を大量にダウンロードするような事態になると、100Mbpsの高速伝送を享受出来なくなります。
しつこく勧誘する営業マンには”Best Effortですよね、実際はどの程度の速度が出るの?”と質問すると、半数程度は”Best Effort”が判らずに退散します。
最近のコメント